2014年2月1日土曜日

「LADY GAGA」はCDやDVDの品質(内容)表示か?

 先週、日本商標協会での「LADY GAGA」判決(H25.12.17 知財高等判 H25(行ケ)10158 審決取消請求事件)の検討会がありましたが、都合が悪く参加できませんでした。日本弁理士会商標委員会は、特許庁の運用を変えて欲しいという(要望書(『歌手名・音楽グループ名』よりなる商標を拒絶する運用について)を提出していますが、この判決は特許庁の運用を是認するものです。
判決の概要は次のとおりです。
 LADY GAGA本人が代表を務める会社(原告)は、商標「LADY GAGA」について特許庁に商標登録出願しましたが、,第9類「レコード,インターネットを利用して受信し, 及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」を指定商品とする本願商標については登録が認められませんでした。そこで、特許庁による審決の取り消しを求めて提訴したものです。
 審決の理由は、本件商品に使用した場合,これに接する取引者・需要者は,当該商品に係る収録曲を歌唱する者,映像に出演し,歌唱している者を表示したもの,すなわち,その商品の品質(内容)を表示したものと認識するから,本願商標は,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ず,また,本願商標をその指定商品中,上記「LADY GAGA」(レディ(ー)・ガガ)と何ら関係のない商品に使用した場合,商品の品質について誤認を生ずるおそれがあり,したがって,本願商標は,商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当するというものです。
 裁判において、原告は、
1 本願商標の自他商品の識別力を認定するに当たり,具体的な使用態様を限定して判断を行ったことの誤り
2 本願商標の自他商品識別力の有無に関する判断の誤り
3 本願商標のような歌手名等が現実に自他商品の識別標識として機能している事実を看過したことの認定の誤り
を主張して争いましたが、いずれについても認められませんでした。  そして、次のように判示しました。

 以上によれば,「LADY GAGA」(レディ(ー)・ガガ)は,アメリカ合衆国出身の女性歌手として,我が国を含め世界的に広く知られており,「LADY GAGA」の欧文字からなる本願商標に接する者は,上記歌手名を表示したものと容易に認識することが認められる。
 そうすると,本願商標を,その指定商品中,本件商品である「レコード,インターネットを利用して受信し,及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」に使用した場合,これに接する取引者・需要者は,当該商品に係る収録曲を歌唱する者,又は映像に出演し歌唱している者を表示したもの,すなわち,その商品の品質(内容)を表示したものと認識するから,本願商標は,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない。したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当する。
・・・
 しかし,我が国を含め世界的に広く知られた歌手名を表示したものと取引者・需要者が容易に認識する本願商標が,指定商品中本件商品において自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないことは,上記1(2)に判示したとおりである。自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない以上,本件商品において本願商標が表示されて使用された場合,品質(内容)の誤認を生じることがあり得るとしても,出所混同を生じさせることはないから,原告の主張には理由がない。
論点は、歌手(アーティスト)名がレコードや録画済みDVDの品質(内容)表示(商標法3条1項3号)に該当するか否かということです。人の氏名は識別力を有しますが、「レコード」等の商品について識別力を有するどうかです。判決は、「当該商品に係る収録曲を歌唱する者,又は映像に出演し歌唱している者を表示したもの,すなわち,その商品の品質(内容)を表示したもの」であるから自他商品識別力を否定していますが、賛成できません。収録曲を歌唱する者等が商品の品質(内容)表示か否かはさて置き、歌手(アーティスト)名が商品の出所であれば自他商品識別力があるといえるからです。
 原告は、『本願商標が「我が国を含め世界的に広く知られている」ものであるならば,商標登録が認められ,商標法による保護が与えられるべきである。』と主張しましたが、裁判所は、その著名性故に品質(内容)表示に該当するとし、「自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない」以上、出所混同を生じさせることはないと判旨しています。
 商標法3条1項3号該当性が論点であり、2項(使用による識別力の取得)については論じていません。3条1項3号の該当性判断において、「本願商標に接する者は,上記歌手名を表示したものと容易に認識することが認められる。」と判断していますが、同時に、その歌手が商品の出所であると認識すると思います。