2014年6月25日水曜日

ホンダのバイク「スーパーカブ」立体商標登録!

 ホンダのバイク「スーパーカブ」が立体商標登録されました。
 1958年の販売開始からこれまでに160か国以上で8700万台以上販売されたということです。
 このように長期にわたって販売されている商品は、モデルチェンジによって発売当初のものとは外観が異なって(商標の同一性が失われて)いるのが通常です。この商品の登録が認められたのは、大きなモデルチェンジがなかったことが理由のひとつでしょう。
 審査の経過をみると、審査の段階で、審査官は、通常のバイクの形状を表しているに過ぎないという理由で登録を拒絶しました。
 出願人(本田技研工業株式会社)は、特許庁の上級審である審判を請求しました。審判においても、通常のバイクの形状を表しているに過ぎないという審査結果は支持されましたが、出願人が審判で主張した、「永年の販売によって当該バイクの形状を見れば需要者はその出所を識別できる」という理由を採用しました。審決は、次のようにいっています。

 「使用に係る商標ないし商品等の形状は、原則として、出願に係る商標と実質的に同一であり、指定商品に属する商品であることを要するというべきである。」
 「本願商標は、1958年以降、モデルチェンジを繰り返し、派生モデルも生じているものの、その特徴において変更を加えることなく、本件審決時までの50年以上にわたって、請求人により製造、販売されている二輪自動車であるスーパーカブの立体的形状であり、その生産台数は一貫して極めて多く、日本全国で販売され、幅広い層の需要者に使用されているものである。また、本願商標は、長年にわたり多くの広告や雑誌等において紹介され、そのデザインの継続性から各種デザイン賞にも選定されているものであり、さらに、本願商標と出所の混同を生じるおそれがある他人の二輪自動車は見当たらないものといえる。
 そうとすれば、本願商標は、二輪自動車について使用された結果、請求人を出所とする識別標識として、需要者が認識するに至ったものというのが相当であるから、本願商標は、自他商品識別力を獲得するに至っており、本願の指定商品である二輪自動車の需要者が、本願商標に接するときは、請求人に係る二輪自動車であることを認識することができるものというのが相当である。
 したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するというべきである。」(不服2013-009036

2014年6月22日日曜日

(続)「LADY GAGA」はCDやDVDの品質(内容)表示か?

 早いもので、先の投稿から数ヶ月経過しました。その後、他の研究部会へ出席し、諸先輩の話を伺い、私の考えも変わってきました。。
 昨年12月に「LADY GAGA」判決(H25.12.17 知財高等判 H25(行ケ)10158 審決取消請求事件)が出ました。日本弁理士会商標委員会は、昨年10月に『歌手名・音楽グループ名』よりなる商標の拒絶理由の運用について、特許庁に要望書を提出しています。
知財高裁の判決は、日本弁理士会商標委員会の要望とは反対の結論であり、現在の特許庁の運用を認めるものです。

 「判決を是認する立場」の諸先輩によると、CDやDVDにおける歌唱者名の表示は、商品であるCDやDVDの出所(製造者・販売者)を表示するものではなく、内容表示にあたるというものです。
 歌唱者名が無名なら、内容表示に該当しないが、歌唱者名として名が知られていくにつれ、当該歌唱者とその者による演奏・歌唱との間には一体的な意味合いが生じ、当該歌唱者名は当該演奏・歌唱の内容そのものを認識させるようになります。レディ・ガガのような著名な歌手になれば、需要者は、そのCDやDVDに収容された楽曲の歌い手ととらえるので、それは、本来的に登録することができない商標(商標法3条1項3号)に該当するというものです。

 歌唱者名が無名ならば登録され、有名になれば登録されないというのは、信用の化体した有名な商標がより厚く保護されるべき商標制度の趣旨に反しているようにも思われますが、商品等との関係で識別力を有さない商標を保護しないのは、商標法の基本的な考えですから、諸先輩の上記「判決を是認する立場」が正しいのでしょう。